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taiken blogブログでは、僕が気になっている柔道家やその関係者をインタビュー形式で紹介で紹介します。

創造力は武器になる?新時代を歩む柔道家のセカンドキャリア #008 青木雅道

こんにちは、平良賢人です。体作りは主にマクドナルドで行っています。

 

さて、今回オンラインでインタビューをしていた相手は昨年柔道の第一線を引退し、現在はWEB・映像制作を主とする事業をスタートした青木雅道(元旭化成)くん。

 

日本大学の3期後輩にあたる彼は柔道部の全体練習が始まる前に道場に来て、一人で自主練をしているような努力家であり、一方柔道以外のところでは持ち前のユーモアと行動力を駆使して自分が面白いと思ったことを次々に実行していくエネルギッシュな人間です。

 

年末の納会では饒舌なスピーチで笑いを取り、余興となれば寝る間を惜しんで夜中の3時まで稽古に励み、柔道で活躍したと思ったら、引退後に事業を始めたり、カフェをオープンしたり。

 

 

残念ながらカフェはもう溶けてしまった(店舗はかまえず、出店型に変えたらしい)ようなのだが、「理屈や根拠より今は自分の本能や感性を信じて突っ走りたいです」と話すユニークな彼の存在をみんなに広めたくて話を聞いてきました。

 

 

青木雅道、1996年生まれ。宮崎工業高校日本大学旭化成株式会社→WEB・映像制作を主とした101合同会社を設立。現在は一人で事業を手掛ける。柔道選手としても2017全日本学生体重別柔道選手権大会-90kg級第3位や2018全日本実業柔道個人選手権大会-81kg級準優勝などの実績がある。26歳。

 

***

 

━━ 雅道とは大学で1年間しか被らなかったけど、かなりストイックに柔道の稽古やトレーニングに取り組んでいた印象がある。どういう気持ちで練習してたの?

 

青木:高校生の頃から強くなるには「練習量が絶対」だと信じていて、日大柔道部ってみんなめちゃめちゃ練習するじゃないですか。まずそこで負けたくないって気持ちがありました。

 

試合で勝って結果を出すこともそうですが、すごく単純に今日自分はどれだけやれたのか、昨日の自分を超えられたのかという面も人として大切にしたくて

 

━━ 当時、日大の練習は乱取りが毎日6分の20本で、全体練習が終わった後はそれぞれ自主練や治療に行くって流れだったじゃん。疲れも溜まってるし「もう今日はやりたくないな」とか「気分が乗らないな」って思う日はどうやって自分を奮い立たせていたの?

 

青木:やりたくないからやってましたね。

 

━━ ん?

 

青木:自分でも上手く説明できないんですけど、やりたくないからやってました。やりたくないのはみんな一緒なので「嫌だな」とか「きついな」とか思った時こそチャンスだし、やるべきだと思うんです。

 

━━ それはもちろんそうなのだけど、理屈じゃないときってない?

 

青木:やりたくないって気持ちはすごく理解できるんですけど、それこそ理屈じゃないというか、僕の場合は「ここが頑張りどころだ!カーン!!」みたいな勝負のゴングが鳴る感覚があって、辛いことに向き合えば向き合うほどスイッチが入ります。それに、そうすれば一日一日後悔なく過ごせますし。

 

━━ すごい、めちゃめちゃ素晴らしいな、、、。人として大切にしたいと考えていることが、柔道や心の強さに繋がっているんだね。

 

話は少し変わるんだけど、雅道って稽古やトレーニングをストイックにこなす一方で、柔道部の納会なんかでは、けっこうガチなシンデレラの劇してなかった?

 

青木:してましたね。僕と坂東(現日本大学女子柔道部コーチ)が脚本を書いて、オーディションなんかもして。「やるからには本気でやんないと、本番で恥をかくことになるぞ」ってなんかかなり熱量高く取り組んでいました(笑)。

 

━━ シンデレラの練習はどのくらいしてたの?

 

青木:期間は1ヶ月くらいなんですけど、夜中の3時頃までほぼ毎日です。もちろん稽古や自主練をすべてやった上で劇の練習はしていました。

 

 

━━ 夜中の3時!!ガチの劇団じゃん!!

 

素朴な疑問なんだけど、練習で疲れている上、翌朝に朝練が待っているのに何でそこまでやるの?

 

青木:やっぱりどんなことでも楽しい方がいいし、面白い方がいいじゃないですか。スポーツの世界って多少なりとも上下関係や緊張感があって、僕はその空気があまり好きじゃない。こういうイベントでみんなを笑わせたり楽しませたりすることが出来れば、全体の雰囲気も良くなると思ったから、そのチャンスがあるならぜひ頑張ってみたいと思いました。

 

それに柔道部でのポジショニングというか、まわりから面白い人だと思われることで自分が生きやすくなるとも感じていて、そういう狙いも少なからずありました。

 

━━ なるほど、上下関係や緊張感は全部が悪い訳ではないけれど、楽しいに越したことはないからね。

 

青木:怖い先輩が嫌いだとかそんなことはないんですけど、でもやっぱりまわりに厳しくすればするだけ、その矛先は自分にも向くというか。それってすごく自分の世界を生きづらくしてるように見えちゃって。。。

 

例えば「チームのために自分は嫌われ者になる」という考えは、誰にでも出来ることではないし、ある意味すごく尊いことだとも思います。ただそれより僕はごきげんな人にはごきげんな人が集まるみたいな考え方の方が絶対にいいと思っていたので、それを自分で体現したかったんです。

 

━━ うん。すごくいいと思う。今の時代らしいというか、そもそも嫌われたい人なんていないし、チームのためを思って行動している人が傷つくのは見ててつらいとこあるし。

 

ただ、嫌われ者という役回りの必要性も身に染みて痛感したことがあって、、、。だけれどもそんな方法ばかり繰り返していても、現状維持の連鎖が続いていくだけで、ちっともヘルシーじゃないよな。直ぐにじゃなくても、この感覚をすこしずつアップデートしていければいいのかも知れないね。

 

それで、一番の理想は柔道の結果も出て、なおかつチームの雰囲気が穏やかな状態かと。

 

青木:そうですね。大学には柔道をするために来たので、優先順位は常に一番だし目標を達成するために必死に稽古するんですけど、劇とかそういうのはやるべきことを全部やった上でやっているので、僕はこれが正解だと信じています。

 

━━ うんうん、ちなみに雅道たちが劇の練習を遅い時間まで練習することについて「そんなことしてないで早く睡眠とれよ」って声も一定数あったと思うのだけど、いわゆる反対意見はなかったの?

 

青木:あったと思います。うん、ありましたね。

 

━━ そういう時はどう思ってた?

 

青木:しめしめ、こんなに楽しいことを知らないのかって気持ちでした(笑)。

 

ちょっと真面目に話すと柔道部だから柔道だけに一生懸命取り組むというよりも、僕は柔道をしてる以前に青木雅道という一人間なので、自分が「これだって!」って思ったことは全部にフルコミットしたい。それでもしバランスが取れなくなったら本末転倒なんだけど、ちゃんと全部に本気を出せている自信があるので、たとえ文句を言われてもしめしめって思うくらいで特に気にならないです。

 

それが正解かなんてやってみないとわからないんだから、なら自分が面白いと思ったことを信じて挑戦したいですよね。その方が人生楽しいですし。

 

━━ たしかに。柔道を頑張ると決めているから稽古やトレーニング以外のところでエネルギーを使うことに抵抗を感じる部分もあったけど、スポーツと恋愛みたいに両立出来るのならそれに越したことはないよね。

 

二兎追うものは一兎も得ずだけど、二兎追わないといけない時があることを雅道の本能が感じているのかもなぁ、、、。

 

シンデレラは成功だった?

 

青木:大成功でした!!

 

 

━━ 大学卒業後は実業団の旭化成に入社。率直にどうだった?

 

青木:正直最初は僕なんかが旭化成なんておこがましいと思っていたんですけど、やっぱり世界一のチームで一員として戦えるのは誇らしかったです。

 

ただ練習に関しては本当に辛かった。柔道をしてるのにまったく人投げれないの毎日だったので、、、。うん、世界一のチームで一番弱かったのが僕ですね。

 

━━ 社会人1年目で実業団準優勝だよね?順調にみえたけど、苦労してたんだね。

 

旭化成に在籍していたのは約3年と聞いているのだけど、この期間で学んだことや感じたことを教えてもらえる?

 

青木:いわゆるプロ意識と言われるようなものは勉強になりました。コンディショニングだったり、こんなことまで考えていたのかという先輩方の技術だったり。

 

それとこれは感じたことなんですけど、自分の才能を思い知ったというか、本物を見て自分の器を知れたと思います。

 

━━ うん、自分の器というのは雅道にとってどういうものなのか、そしてどのタイミングで感じ始めたのか聞いてもいい?

 

青木:自分はオリンピックや世界選手権で活躍できる器なのかってところです。

 

3年目の実業団で負けたときに「自分はもうここまでなんだな」と感じました。なんていうか無責任に言うのはよくないんですけど、自分の限界みたいなものを、そこが限界だったことないとは思うんですけど、器じゃないことを知りました。

 

限界ではなくて器です。器ってその人が持ち合わせている量じゃないですか。

 

━━ 自分の器がいっぱいになっていることに気づきながらも、それでも戦い続けて、実業団で負けてついに溢れてしまったのかな。

 

青木:そうですね。いま振り返ると本当は学生時代から薄々感じていたのかも知れません。だけど、自分の可能性を信じて、信じられなくなる気持ちを騙して、ここまでやって来たので「もう選手としての戦いは全うしたな」という気持ちでした。現役生活の長さとかは関係なくですね。

 

━━ 現役引退は柔道をやり切ったって気持ちからだったんだね。

 

青木:そうですそうです、やっぱり学生の頃もそうですけど、一日一日を後悔なく過ごすっていうのは社会人になってからも変わらないので、引退を決めた時も「自分はやり切った」って気持ちが強かったです。

 

 

━━ 旭化成を退職後に選択したのは自分で会社を作るという道。会社に残るでも、転職するでもなく個人での事業スタートを選んだのどうして?

 

青木:端的にいうと、既にある組織に所属するよりも自分で作った組織の方が面白いと思ったことが始まりです。それで自分には一体なにが出来るのかを考えた時に、柔道と並行して勉強していたWEB制作や映像制作のスキルを生かせるのではないかと思って、それらを主とする事業を始めました。

 

それといま僕はサブスクでホテル暮らしをしているんですけど、それを見つけた時にすごく感動して「こういうのが普及すれば人のライフスタイルが変わるぞ」ってワクワクしたんです。そんなふうに社会や人の価値観を変えて、より豊かに、より便利に、みんなが生きやすくなるサービス作りたいと考えています。

 

━━ WEB制作ではどんなものを作っているの?

 

青木:WEBと映像を掛け合わせて、伝えたい情報をより分かりやすく、より魅力的に表現したホームページの制作を頑張っています。サブスク型で運営している分、初期費用も抑えられるし、必要に応じて僕が補填や修正もするので、可能な限りお客さんに寄り添いながら一緒に作っている感覚ですね。

 

 【青木雅道くんがスタートした事業はこちらから】

101-pro.com

 

【HP制作実績 日本大学女子柔道部のHP】

nichidai-girls-judo.com

 

━━ やっぱりこれだけインターネットが発達した社会だから、遊びでも食事でも気になった場所はまずググるじゃない。ツイッターやインスタグラムのようなSNSを始めるのは基本的に無料だし、今ではどの会社もやっている訳で運用にもそれなりの再現性がある。

 

だけれども、ホームページはそれらと比べても明らかに入口のハードルが高いし、無料HPもあるにはあるけど、イメージ通りにできるかと言われれば疑問だから、そこに映像を掛け合わせながら寄り添えることは強みだよね。(WEB制作の世界知らんけど)

 

青木:自分の出来ることきっかけに始めた仕事ではありますが、この分野での課題解決にも取り組めたらいいなと考えていて、例えばスポーツの大会でたくさんの人が選手にスマホを向けて、レンズ越しに試合を観戦する光景ってあるじゃないですか。

 

それも何か一つ効率のいいカメラを準備して、あとで配信などネット越しに視聴できるようにすれば、みんなちゃんと自分の目で見て応援する事が出来るし、テレビとビデオを線でつなぐといった手間も省けてより簡単に見れると思います。

 

いただいた仕事には誠実に取り組みつつ、たくさん人たちが喜べるような仕組みも作っていきたいです。

 

━━ たしかに歌手のライブでも大きく映し出されるモニターの方が絶対よく見えるのに、小さくてよく見えない本人をじっと見て目に焼き付けたりしてる。

 

一方で柔道の試合で気になる対戦が実現した時は僕もスマホで動画を撮るからその気持ちもよく分かる。

 

思い出は記録と記憶の両方を残しておきたいってことかな。

 

***

 

【青木くん制作の宮崎県柔道場紹介サイト、通称道場マップもぜひ!!】

 

start-judo.com

 

 

***

 

━━ 事業をスタートしてから今日まで、表に出すエピソードは明るい「陽」の話が多いと思うのだけど、あまり話す機会もないであろう雅道の「陰」の部分に興味がある。人って余裕がなくなると性格キツくなったりするじゃん?

 

青木:上手くいかないことイコール悪いことだとは思わないんですけど、上手くいかない時の自分への向き合い方が分からなくなったことがあって、、、。

 

そうなると僕の中にある問題を「理解できないのが悪いんだ」と社会のせいにしたり、まわりの人に強く当たってしまったり、ピリピリして周囲の人たちにも気を遣わせてしまいました。

 

━━ ふむふむ、早く成功しなくちゃって焦りがあったのかな?

 

青木:成功ばかり考えている訳でもないんですけど、チャンスを掴むのが早ければ早いほど次の道筋が増えるというか、早く行動して損はないなって。

 

ただ僕の中では”焦っている”という感覚だけじゃなくて、ポジティブな気持ちも強くあったので、母に「生き急ぎ過ぎ」だと声をかけられてそこで気づいたって感じです。

 

━━ あー、このあたりは当事者にしか分からない感情かも知れないね。今の時代に「スポ根上等!!追い込んで追い込んで狂うほどの努力を続けて得られるものがある!!」なんて言葉は自分以外に向けるべきではないけれど、でも狂うほどに頑張らなくちゃいけない時期は絶対にあるし、もう自分のケツは自分で叩くしかない。

 

青木:上手くいかなかったことも経験として蓄積されているから、今では同じことが起きても「そんなこと前にもあったな」で乗り越えられるようになりました。

 

━━ 分厚いカサブタになっていそうだね。

 

自分の生き方には相変わらず後悔ない?

 

青木:ありません。

 

 

━━ では、そろそろ締めたいと思うのだけど、最後に話しておきたいことがあればお願いします。

 

青木:このブログが面白いものに仕上がるかどうかは平良先輩の力もあるし、それは現時点でどんな評価を受けるかわからないけど、多分将来”価値のあるもの”になる。そうなるように僕は頑張るし、そんな生き方をします

 

━━ (、、、!!)

 

青木:辛かったことや苦しくかったことだって、これから僕がどんな行動をして何を成し遂げるかによって大きく意味が変わると思うし、全部が繋がって今の自分がある。

 

本当は「いま何してんの?」とか「いまどこにいるの?」とか、僕がしていることを「理解できない」と言っている人がいることも知ってるけど、少し先の未来ですごく面白いものになっているはずだから、これからの僕を見ていてほしいです!

 

━━ そうだね。どんな道でも人生を切り開いていくのは自分自身だから、いま取り組んでいることを信じて進んでいければと思います。もしそれが苦難な道に続いていたとしても、そのまま進んでもいいし、あるいは方向転換してもいいし、どう自分の糧にして繋げていけるか。楽しみにしています!

 

***

 

一度、柔道選手としての自身の器に一区切りをつけた彼は、今度は別のキャリアで自らの可能性に奔走している。ワクワクできることやれるかもと思えることは、今の自分を肯定しながら、新しい自分を見つけに行くことなのかもしれない。

 

そして大抵は上手くいくことなんかより、上手くいかないことの方が多い人生なのだから、どんな結果も恐がらず、一つひとつ思いっきりやるのが有意義だと思った。

 

これから先、自分の信じる道を貫き通した青木雅道の仕事が世間に認められたとき、アスリートのセカンドキャリアにはまた新たな道が切り拓けるのだと信じている。

 

 

Text by 平良賢人 (@taiken0422

 

 

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