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taiken blogブログでは、僕が気になっている柔道家やその関係者をインタビュー形式で紹介で紹介します。

「心を整える」ハッピーな初心が私の柔道を輝かせる。#009 堀川恵

第9回はこの人。2022世界選手権優勝の堀川恵選手と話しました。

 

彼女は高校2年生でグランドスラム東京を史上最年少で制し、一躍脚光を浴びたものの、それからの選手としてのキャリアは決して順風満帆とはいかず、長い期間もがき苦しみ続け、遂に開花した苦労人の世界チャンピオン。

 

だと思っていた人は絶対に読んでください。

 

そうなんだけど、そうじゃないんだ!

 

前半は僕が聞きたかった堀川選手のこと。

後半は堀川選手が教えてくれた自分に合った気持ちの整え方です。

※取材中の8割は笑っていたので、リラックスして読んでもらえると嬉しいです。

 

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堀川 恵(megumi horikawa)
1995年10月18日 長野生まれ 
職業 パーク24株式会社所属の柔道選手(日本代表)

主な実績 
・2022 グランドスラムテルアビブ 優勝
・2022 グランドスラムブダペスト 優勝
・2022 世界選手権 優勝
・2022 グランドスラム東京 3位

 

━━ 高校生でグランドスラムを優勝してから、大学、社会人へと進む過程の中でこれは大変だったなって時期はありますか?

 

堀川:うーん、学生時代はオリンピックを目指すという点では及ばなかったし、国際大会で勝てなかったりもしたのですが、国内の大会は何度か勝てていたので、まだ大丈夫でした。

 

イメージを崩してしまうかも知れませんが、あんまりコテコテのめっちゃ努力しますってタイプではないので、当時を振り返ると「意外と勝ってなかったな、山あり谷ありじゃん」って感じです。(笑)

 

まあ社会人1、2年目はキツかったですね。

 

━━ それは実業団に入って柔道が仕事になったというプレッシャーが原因なんでしょうか?

 

堀川:大学生は4年間という決められた時間があるけど、実業団に入ってこれから自分の競技生活は残りどれくらいかなって考えた時に、初っ端から負けが続いてて、先行きが見えないことがすごくキツかったです。

 

経験的に環境が変わったばかりの時はだいたい上手くいかないみたいで、その時は投げやりにもなりかけました。もう辞めてもいいかなって。

 

━━ そうだったんですね、、、投げやりになった時の話を具体的に教えてください。

 

堀川:んー、そうですね。もう辞めてもいいやって思ったら、普通に先生に「次東京無理だったら辞めます」とか言ってました。辞めます、もういいですみたいな。(笑)

 

━━ え、先生ってパーク24の園田先生ですか?

 

堀川:そうです、園田先生です。先生が「体を動かすのは本人だから、本人がやる気出なきゃこっちがいくらやれって言っても出来ない。やれるんならやれるところまでやった方が絶対にいいと思う」って話してくれて。それなら、じゃあやるかって。(笑)

 

━━ (笑)

 

上手くいかなくてストレスが溜まっちゃうとか大丈夫でした?

 

堀川:ないないないないないです、私そんなデリケートじゃないです。(笑)

注 堀川選手、右手をめっちゃ左右に振る

 

━━ これは本当になさそうですね。僕はてっきり深刻に落ち込んだりしたのかなって想像していました。(笑)

 

自分の中での気持ちの変化はどういったものだったんですか?

 

堀川:最初はもう柔道が楽しくないだとか嫌いだとかばかり思っていたんですけど、いざ辞めるとなった時に、なんで自分は柔道をしてきたのか思い出してみると、元々私は楽しく柔道をするのが好きだったことに気づいたんですね。

 

それなのに最後が嫌いになって終わるではすごく勿体無いのでは?と思って、気楽にと言ったら変ですけど「柔道は楽しいものだし、楽しんでやろうかな」って気持ちになりました。

 

あとそのあたりから、周りの声や話もスッと自分に入ってくるようになった感覚があります。

 

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━━ 東京オリンピックの代表が決まってからも、現役を続けることを決めて稽古に励む中で、メンタルがマイナスよりになることもあったのではないかと思います。

 

堀川:そうですね。自分の中で考えることはすごくあって、自問自答していました。ただ試合でどうこうよりも試したい柔道を実践してみることが面白かったり、当時はまだ実業団3位とかなんですけど、やっとちょっと戻ってこれたねみたいなところがあったりして、そういうちょっとずつが積み重なって気持ちも明るい方に向いて来ました。

 

自分の中でやれるところまでやってみようの延長延長延長で今みたいな感じです。(笑)

 

━━ 自然体で素敵ですね。堀川選手にとっての楽しい柔道を思い出せたことが、本当に効果的だったんでしょうね。

 

堀川:私の家族が私の柔道に対してすごく暖かくて、父は松本第一高校の監督でもあるんですけど、全く怒られたこともなく「柔道は気楽に好きなだけやったらいいよ」って言ってくれていて、そういうバックボーンがあったから、自由に楽しくやりたいなってこんな性格のままこれたのかなと思います。

 

━━ もしお父さんが巨人の星みたいだったらどうしますか?

 

堀川:泣いちゃいます。私自身がそもそも厳しくされると「もうやだ。やんない。帰る」みたいな感じでどっか行っちゃうんで。褒められた方が伸びます。(笑)

 

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━━ 話を少し遡るのですが、2017年の全日本選抜柔道体重別選手権大会で堀川さんが優勝した-63kg級は世界選手権への派遣なしだったじゃないですか。当時の気持ちを教えてください。

 

堀川:んー、やっぱり「え?」ってなりましたし、実家に帰って犬の散歩をしながら田んぼでめっちゃ泣きました。「まじで、なんで〜」みたいな。(笑)

 

まあその時はそう思ったんですけど、時間が経って自分で考えたら海外の成績もあまり出てなかったし、安定して勝っているかと言われれば自信を持ってそうとは言えなかったし、あのタイミングで選抜は勝ったけど、落ち着いてみれば、そう思うしかないって感じでした。

 

━━ なるほど、受け入れるしかなかったという感じでしょうか?

 

堀川:そうなんですけど、本音を言うと勝負はやってみないと分からないことだから、チャンスすらもらえないのは何でだろうとは思いました。

 

━━ そうですね、やる前から決めつける必要もないですもんね。

 

では更に話を遡ります。高校生の時の話なんですけど、堀川選手は1年生でインターハイを準優勝していますが、これは優勝を狙っていたんですか?

 

堀川:インターハイに限らずなんですけど、どの大会もあんまり「優勝しよう」って気持ちでは挑まないというか、こう湧き上がる闘志で戦うタイプではないんですよね、、、。

 

どちらかというと、眉毛を剃ったらダメだけど、眉毛剃っちゃう方のタイプです。しっかりお洒落も忘れずみたいな。すみません、若気の至りです。(笑)

 

━━ やるぞやるぞ!ではなく、ちょっと頑張るかって感覚でしょうか?

 

堀川:そんなイメージです。中学の先生に言われたんですけど、優勝優勝っていっても、目の前の試合を1つずつ勝たないことには決勝にすら勝ち上がれないので、遠くを見過ぎず、一戦一戦しっかり試合していくって考えが私には合っていました

 

━━ 例えば決勝戦まで含めると1日5試合だったとして、一度にその全てを考えてしまうとそれなりに疲れや緊張が生まれてしまうから、余計なことは意識せず目の前のひとつだけに集中する。それをひっくるめた感覚の言語化が「ちょっと頑張るか」なのかなって思いました。

 

堀川:伸び伸びやるのが自分の柔道のいいところだと思っているので、心に余裕があるじゃないですけど、まわりが見えてるくらいの方がパフォーマンスはいいですね。あんまり固くなって力とか気持ちで勝てるタイプではないので、、、。

 

 

━━ 高校2年生はなんとグランドスラム東京を優勝するなど大活躍の年になりますが、そのシーズンの話を教えてください。

 

堀川:印象深いのは全日本ジュニアで優勝した時のことなんですけど、その頃は2学年上の佐野賀世子さんが私たちのスーパースターで、1年生のインハイも負けてて「うわ、この人マジで勝てないわ」って思っていたんですね。それで決勝戦で佐野さんとあたって、初めて勝ててそれが本当に嬉しかったです。

 

なのでその後の講道館杯はもう「イェーイ」って気持ちでした。(笑)

 

すみません、もうちょっと真面目に話しますね。

 

━━ いえいえ、そのままでお願いします。急に改まらないでください。(笑)

 

講道館杯はいつも通り伸び伸びやろうって気持ちですか?

 

堀川:失うものはないですし、自分の実力がシニアにどれだけ通用するのか、イケイケドンドンですね。

 

━━ 3位決定戦に勝利した時は嬉しかったですか?

 

堀川:試合に勝つのはもちろん嬉しいんですけど、まずは喜びよりもホッとすることの方が多くて。もうそれ以上やらなくていいじゃないですか、その日は。

 

━━ あ、そっちですか。(笑)

 

堀川:そうなんですよ、「うわ〜、今日やっと終わった〜」みたいな。

 

━━ グランドスラム東京に選ばれた時の気持ちは嬉しかったですか?

 

堀川:おおやったー、東京の試合だーって感じですね。

 

━━ グランドスラム東京講道館杯からワンステージ上がったシニアの国際大会です。これも相変わらずイケイケで?

 

堀川:ですね、当時の監督が園田先生だったんですけど「何も気にしないでいいから、自分の好きなようにやって」と声をかけてもらいましたし、私自身プレッシャーも何もないから、自分が好きな選手のみなさんと同じ舞台に立てていることが嬉しくて、その楽しい気持ちのまま試合をしました。

 

━━ 優勝した時の気持ちは?

 

堀川:ホッとしたです。(笑)

 

━━ 喜びよりもホッとするのはグランドスラムでも変わらないんですね。(笑)

 

堀川:変わらないですね。試合を見れば分かるんですけど、私、終わった時に一度「フッ」って顔してるんですよ。フッ、終わった〜、、、その後にイェーイって感じでした。

 

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***

 

━━ せっかくなので、堀川選手と中高でチームメイトだった出口クリスタ選手のお話も聞いていいでしょうか。実は以前、出口選手がこのブログに出てくれておりまして。

 

taiken0422.hatenablog.com

 

━━ 堀川選手から見た出口選手や何か2人のエピソードがあればお願いします。

 

堀川:普通に仲良いですね。ブログにも出ていたから分かると思うんですけど、あんな性格なんでトゲトゲは絶対してないじゃないですか。(笑)

 

でもまあめちゃめちゃ負けず嫌いですね、クリスタは。

 

━━ すごい気さくな方ですよね。堀川選手もなんですけど、いい意味でカチッとしてない。

 

2人は中学から一緒だったんですよね?

 

堀川:そうです、私が中学からクリスタの道場に移動しました。私の柔道人生で練習は中学が一番キツかったし、量も一番やり込んだ地獄の3年間です。

 

なんかヤバすぎてあんまり考えるあれもなく、とにかく練習して、とにかく試合して、とにかく戦って、とにかく練習してって感じでした。全国大会の試合直前に男子の先輩とめっちゃ乱取りさせられたりして。(笑)

 

━━ それ出口選手も話してました、、、。試合当日なのに超乱取りしたって、、、。

 

堀川:そうだ、それクリスタめっちゃしばかれてました。クリスタ一番しばかれてます。(笑)

 

━━ (笑)

 

堀川:クリスタは中学生の時、ほんとしばかれてるんで間違いないです。私はちょいちょいそういうのがあって、男子の先輩に引き摺り回されて、泣きながら乱取りして、試合行くみたいな。

 

ただクリスタは減量がキツかったのでそれも理由なんですけど、ふとした時に「え、私なんで?」って。(笑)

 

━━ めちゃめちゃ面白いです。そういうのが必要な時もありますよね。(笑)

 

 

━━ もう1つだけ何かエピソードがあればお話ししていただけますか?

 

堀川:高校時代、夏の暑い日に私とクリスタが元立ちで本数取りをしたんですけど、普段は10〜15本なのに先生が突然「50本」って言い出したんですよ。

 

━━ 10でも多いと思って聞いてたら、あとからとんでもない数字が出てきましたね。

 

堀川:私たちも「おや」ってなって、2人で「ん?」ってなったんですけど、先生も「ん?」ってなってて、もうやりました。やりましたよ。

 

━━ うわぁ、、、。

 

堀川:やりましたよ〜、まあ私はやりきれなくて、過呼吸で死んだんですけど。

 

━━ やば。(笑)

 

堀川:クリスタだけ全部やって、そのまま走り行かされてましたね。

 

━━ え、そっから走るんですか?

 

堀川:走ってましたね。私は陰で休んでいたんですけど。だからクリスタそれちょっと根に持ってます。「メグ、最後までやってないよね」って。(笑)

 

━━ 堀川選手にとって、出口選手の存在は良き友でありライバルという感じなのでしょうか?

 

堀川:んー、バチバチとかでは全くないですけど、高校1年生のインターハイでクリスタが1日早く試合をして優勝したんですね。優勝した時に涙が勝手に出てきて、でもこれは多分嬉しいとかそういう感情じゃないなって。

 

今までキツい練習をずっと一緒にしてきて、お互い中学からなかなか優勝出来ずにいて、先に優勝されちゃったか〜って気持ちになって。複雑でした。もちろん同級生の活躍だから一緒に喜ばなきゃって感情もあるし、そう思うとやっぱり負けたくない相手だったんだなとも思うし。

 

私が社会人になって「もう柔道やめます!」とか言ってる間にクリスタは世界チャンピオンになってて、その時はもう私とは比べようもなかったけど、いまやっと肩を並べられるところまで来れたので、ここからは一緒に勝っていければと思います。

 

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━━ これから柔道選手としてどのような存在になりたいとか、理想はありますか?

 

堀川:ありきたりだけど、目標にしてもらえたり、この選手が好きって名前をあげてもらえるようになれたら嬉しいです。それに柔道以外でもいろんなことに挑戦して、自分で人生を彩り豊かにといいますか、充実させられる人になりたいですね。

 

あと、柔道界って女子も含めてまわりから見た時の潜在意識が硬派というか、そういう意識が内にも外にも残っていると思うので、髪色とかネイルとか化粧とかそういうイメージ的なところも変えていけたらとは思います。柔道家である前にみんな普通の人なので。

 

━━ ああ、確かに理想の柔道家像みたいなものがあります。柔道イコール臭いがいつまで経ってもアップデートされない縮図といいますか。

 

堀川:みんな考えていることは「柔道がもっと親しみやすい競技になってほしい」で同じだと思うので、お堅く敷居が高いイメージじゃなくて、私は私自身が楽しいと思っている柔道を伝えていければいいなって思います。

 

━━ なるほど、楽しさを伝えるのは堀川選手にうってつけですね!みんながニコニコ笑いながら柔道に励んでいる姿が目に浮かびます。

 

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━━ では話は変わりますが、実業団での現在のスケジュールを教えてください。

 

堀川:午前はトレーニングか治療に行って、午後は大学で稽古ですね。パークでは週末に翌週1週間の予定を決めています。先生方も特に関与せず、本当に自分で考えてって感じですね。

 

━━ そうなんですね。朝練はされてないんですか?

 

堀川:してないですね。

 

※3秒沈黙の後、両者大笑い。

 

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堀川:午前のトレーニングもめちゃめちゃ追い込むとかではないですよね、、、。どうなんですかね、、、みんな、、、。

 

━━ 僕がこれまで話を聞いたみなさんはストイックな方が多かったですね。

 

堀川:あー、だから私、今回自信なかったんですよ。他の記事も読ませてもらってすごく面白くて、みんなの人生って紆余曲折というか凄まじくて興味そそられるなと思ってて、、、。

 

私は特に怪我も手術もないし、柔道を楽しくやってきて、それはそれでいいことなのかも知れないけど、何話せばいいんだよって不安だったんです、、、。

 

━━ 失礼かもですけど、ちょうどいい緩さというか。

 

堀川:そうなんです、私緩いんですよ。先生にもよく言われます、、、。そしてなんてったって自分に甘い、、、!!

 

━━ それこそ柔道界の偏見というか、僕は強い選手ほど地獄のような日々を生き抜いてきたというイメージを持っていたんですけど、今日堀川選手のお話を聞いてリセットされました。(笑)

 

堀川:そうです、私はそういう呪縛を全部消したいんです。(笑)

 

練習やトレーニングをしっかりやること、量をこなすことは必要だと思います。私も中学生の時はとんでもなく練習しましたし、高校ではすごい走りましたし、大学では朝練もあったので。

 

社会人になった今は自分がやってきたことの中から自分に必要なものをピックアップですね。私の柔道は普段から心の余裕もすごく大事だから、オンとオフは割けてやるようにしています。

 

 

━━ 堀川選手が競技を続けながら大事にしてることを教えてください。

 

堀川:ずっと考えることかなって思います。

 

やっぱり自分に合ったやり方だったり、長所の伸ばし方だったり、他にも自分のテンションが一番上がる状態、パフォーマンスが上手く発揮出来る状態など、そういうのをどう見つけることができるか。そのために何をどれだけチャレンジ出来るのか、どれだけ失敗してもそこからまた挑戦出来るかですよね。

 

もちろん私には考えることが合っていただけで、人によってがむしゃらに稽古しないとダメになる人もいるだろうし、すごく難しいです。

 

━━ 堀川選手の場合ってことですね。

 

堀川:実際、ある時にとにかく量を詰め込んだ稽古を続けて試合に出たんですけど、頑張って頑張ってそれまでやってきて、いざ畳の上に上がったら緊張で逆効果だったんです。自分の気持ちとか、自分の良い悪いに敏感になることも大事かなと思いました。

 

━━ 確かにプレッシャーがない時の方が力を出せたという話はよく聞きます。

 

堀川:でもそのリラックスした状態を作るのってどう考えても難しいじゃないですか。だってこんなに頑張ってるのに気楽になんて、気楽になんて出来るわけねえって思うんです。

 

━━ 確かに、、、頑張ってない方の気楽じゃないですもんね、、、。

 

堀川:どうしたら自分の一番いいパフォーマンスを発揮出来るのかってところは自分にしか分からないし、もちろん大会によっても違う。そこでいうと私は直感というかフィーリングを大事にすることが多いです。

 

あとはなるべく頭の整理をできるようにします。普段の練習でもただがむしゃらにだけじゃなくて、試合を想定して「今こういう状態だからもうちょっと攻める練習をしてみよう」とか考えますね。

 

あとこれは声を大にして伝えたいのですが「私はこういうことをして結果を出してるよ」って言いたい訳じゃなくて、ストイックな稽古やトレーニングに励む選手の姿勢や気持ちはすごく尊敬しています。

 

ただその中に楽しくやって、たまたま結果もついてきてる私みたいな人もいますよってそんな感じです。

 

━━ まさに堀川選手自身の経験を経て生まれた感覚だったり、考え方だと思います。言葉に奥行きがあるというか、そのまま受け取るのでなくて、一度自分の中でちゃんと咀嚼したいです。

 

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━━ 堀川選手が柔道でいいパフォーマンスを発揮するために、心の余裕が必要とのお話がありました。普段の生活でリラックスしてる時はどんな時ですか?

 

堀川:丁寧にコーヒーを淹れたり、お茶を淹れる時間を作ってみたり、ちょっとぶっていると「ああ、今いい感じの時間過ごしてるわ」ってなります。(笑)

 

━━ 丁寧な暮らしですね。(笑)

 

どういう時、どんな状態の自分が好きとかありますか?

 

堀川:楽しいことをしてる時、今の自分は輝いてるなと思える時の自分は好きですね。

 

前はけっこう自分に否定的で自信がなくて「私はダメだ私はダメだ」って思うことも多かったんです。でもある時「自分の人生なのに自分を嫌いになるのってすごく勿体無い」と思って、そこでまず自分を好きになることから始めて、、、。

 

いろんなところに一人旅に行ったり、丁寧な暮らしをいっぱいしてみたり。おしゃれをもっとしたりと、そういうことをしていたら自然と自分が好きになれました。

 

━━ 素敵なお話ですね。これは社会人になってからのことでしょうか?

 

堀川:はい、社会人2、3年目で時間と心に余裕が出来た頃です。柔道も自分も両方好きでいる方がいまのところ上手くいってますね。

 

━━ 自分を嫌いになる感覚もあったんですか?

 

堀川:ありましたね。出来なかったこと1度考え出すと、ネガティブな方にいっちゃう時ってありません?

 

どんどんどんどん、深く深く、答えのないことをぐるぐる回る時があって、なんでもっと試合で勝てないんだろう、なんでもっと努力できないんだろうとか、マイナスな方向に考えると自分のよくないところばかりに目がいって、そんな時は自分が嫌になってしまいました。

 

だから自分を好きになれたことはすごく嬉しかったんです。心に余裕があるからこそポジティブになれるのだと思います。

 

 

━━ では、最後に新年の目標を聞いてもよろしいでしょうか。

 

堀川:今年は世界チャンピオンとして全ての試合に出なきゃいけないのですが、やっぱり柔道だけに捉われない心の余裕を持ちながら、人生という括りの1つのステージとして全力で楽しみながら挑戦していきたい。

 

柔道を嫌いになったり、プレッシャーに押しつぶされたりはしたくないので、自分らしく小さなやりたいことだとか、小さな目標だとかをどんどん考えて、お仕事ですが楽しくやらせてもらっている柔道をこれからも継続してやれたらいいなって思います。

 

オリンピックも近いですし、そんな悠長に言ってられないんですけど、また1年の終わりに今年も良い年だったなと思えたらいいなと思います。

 

━━ 応援しています。今日は長い時間ありがとうございました。

 

堀川:こちらこそありがとうございました。

 

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***

 

気さくで笑顔の絶えない堀川恵選手。

 

彼女の人柄を表すエピソードを紹介してこのブログは終わりたいと思います。

 

 

2022年9月に起こった静岡豪雨の際、ニュースを見た堀川選手は元強化選手でお世話になった岡本理帆さんの家まで弾丸で救援物資を届けたそうです。

 

堀川選手に詳しく話を聞くと、行くことが迷惑になるんじゃないか、そもそも土砂崩れなどで道は大丈夫なのか、いろんな心配もあったけど、大切な人が困っているにのここで動けなかったら私って何なのだろうと即行動されたみたいなんですよね。

 

世界選手権も控えていて大切な時期だったのでは?と質問すると、直ぐに「たかが大会と人の命は比べものにならないですよ」と即答して、「私の1日程度で少しでも誰かの助けになるのならそっち選ぶ以外に選択肢ないです」と笑顔で話していました。

 

 

こんな素敵な選手の話が聞けて、改めて僕は役得だなぁと実感しています。

 

堀川選手、今日は本当にありがとうございました。

 

ではみなさん、また次のブログでお会いしましょう。

 

さようなら~。

 

Text by 平良賢人 (@taiken0422 )

Photo Credit by Tom Taylor / トム・テイラー

 

※トム・テイラーさんは出口クリスタ選手のお父様です。素敵なお写真本当にありがとうございました。

 

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