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taiken blogブログでは、僕が気になっている柔道家やその関係者をインタビュー形式で紹介で紹介します。

「自分を律する。」柔道のために生きる男の「自由」と「責任」と「覚悟」の在り方 #004 一色勇輝

 

「本気で日本一になるための努力をした。もうこれ以上やれない」

 

学生柔道を引退してから今まで、そう思うことで諦めた自分を正当化してきた。

 

度重なる怪我、才能、理想と現実とのギャップ、活躍する同期、どうしても気にしてしまう他人の目、馬鹿になりきれない自分、震えて眠れない夜。

 

これまで、それらしい理由を何個も何個も重ねることで自分の心を守ってきたのだけれど、引退して8年も経ち、趣味の範囲で思う存分柔道を楽しんだことがリハビリにもなったので、もうすっかりその必要は無くなった。

 

大切なのは自分を信じること。迷っても迷ってもそれでも自分を信じること。

 

***

 

なんてことを考えながらも、現実にそれができなかったからこうして苦労した訳で「そんなのあくまで理想論だよね」と、どうしても煮えきらない感情がポツリとそこに鎮座している。

 

競技の世界で、自分を信じて努力し続ける人って、一体何を考えているのだろう?

 

学生時代、不器用ながらも愚直にコツコツ努力している姿をよく見かけ、現在も実業団で活躍している日大柔道部の後輩に話を聴いた。

 

 

「ご無沙汰してます!本当に自分なんかでいいんですか?あと、先輩太りました?」

 

—— さわやかな笑顔を見せながら、謙虚なのか一言多いのかわからない調子でZOOMに顔を出してくれたのはJRA日本中央競馬会に所属する柔道+100kg級の一色勇輝(@yu___u_____ki選手。

 

 

一色 勇輝(yuuki issiki)
1997年2月20日 広島生まれ広島育ち
職業 JRA日本中央競馬会所属の柔道選手

主な実績
・2017 全日本学生柔道体重別選手権大会 2位
・2019 全日本実業柔道団体対抗大会 優勝
・2022 全日本選手権 5位

 

━━ 競技を続ける上で努力するにしても、いわゆる「正しい努力」が必要だと思うのだけど、一色は何か心がけていることはある?

 

一色:んー、自分としては努力に「正しい」も「正しくない」もないと思っています。人によって正解は違うし、もしそれで失敗したとしても「これは違ったんだ」と学びがあるので、それも糧にすれば良い悪いはないかなって。

 

━━ 確かに。確かに過ぎる。

 

例えば、重量級で短足の人が「俺は三角の名手になる」って一生懸命練習するとして、でもそれって自分の体型に合ってないじゃん?

 

一色:そうですね。だからそこに早く気づくことですよね。難しいですけど、ただ漠然と稽古するのではなく、考えながら努力しないといけない。

 

今まわりに東海大出身の人が多いんですけど、やっぱり「頭を使う」ことに長けているなと感じます。先生からも「脳の汗をかけ」って言われてるらしいです。

 

━━ なんだそれ、、、すごいな、、、。

 

一色:日大は基礎体力ガンガンつけて、地力上げて勢いで勝つ!って感じじゃないですか?自分はそれがフィットしたんですけど、それに伴って考えていくことをしないと上にはいけないなって最近よく思います。

 

━━ 日大には日大、東海には東海の良さがあるね。

 

一色:自分の長所短所をしっかり理解した上で、考えながら柔道やトレーニングに取り組めばより良くやっていけると思います。

 

***

 

 

━━ 自分の良いところ、長所はどんなところだと思う?

 

一色:しつこいところですかね。しつこさはあると思います。あと、まわりに恵まれるところです。自分のまわりは目標だったりお手本だったり、尊敬できる人たちが沢山います。

 

━━ 実業団のような天才や一流選手がたくさんいる世界で戦うにあたって、自分の長所であるしつこさと他にも必要なことってある?

 

一色:繰り返しになっちゃいますが考えることだと思います。今までは「自分の柔道する」でなんとか試合をやってこれたけど、それだけだと相手が見えないというか、このままじゃ本当に強い人には勝てません。

 

━━ 地力で上回る人には勝てるけど、そうじゃない相手には勝てない?

 

一色:はい。社会人になってすごく感じています。

 

━━ なるほど……。研究する時間は増えた?

 

一色:だいぶ増えましたね。ここ最近ですけど怪我も多かったので、その分頭を使うようにしています。場面や相手の想定なんかをよくやっていますね。

 

━━ ちなみに怪我ってどんなの?

 

一色:手首の手術をしました。それまでにも小さいのがずっと続いていて、最後にガッツリ手首やっちゃいました。

※2021 3月

 

 

━━ うわぁ、満身創痍じゃん、、、。なんでそんなに怪我続いたの?

 

一色:社会人になってから一気に怪我が増えたんですけど「これはなんでだろう?」と考えたときに、1番の原因は「生活の乱れ」だと気付きました。夜遅くまでスマフォ見て睡眠時間削ったり部屋が汚かったり、柔道のために生きてなかったんです。

 

今になって金野先生の話ていたことがわかってきました。学生の頃「部屋を綺麗にしなさい」ってやたら厳しく言われていたじゃないですか。たしかに部屋が片付いている方がスッキリしますし、気の流れもいいですよね。

 

━━ 懐かしい、掃除は本当に厳しかった。

 

一色:日大って誘惑を上手くカットされていたじゃないですか?点呼もあって、朝練もあるから夜早く寝ないといけないし、無意識のうちに柔道の方向に向いていた。

 

けど社会人になって仕事に行き始めるといろんな人との繋がりもできたし、自由が増える分、誘惑も増える。自由であればあるほど、自制できてないとダメだなって思いました。

 

━━ その言葉、5年前の俺にも伝えてあげたい……。

 

一色:とっくにですが、もう学生じゃないのでこれからは本当の意味で自分の方向を柔道へ向けなきゃいけない。そこを今軌道修正してるんですけど、やっぱり社会人1、2年目はそこに気付けなくて迷走したというか。だらしなかったです。

 

━━ 実業団とかプロの世界ではそれができないとやっていけないんだよね、、、。

 

一色:愚直に怪我をせず毎日全力で生きて、良い習慣を作りながらそこに変化も加えていければ、必ず結果が出ると思います。それを日大で分かっていたような感覚に陥っていました。

 

日大を卒業して3年。けどまだまだこれからなんで頑張っていこうと思います。

 

 

***

 

━━ 可能性の話なんだけど、学生柔道で東京に出てくる人たちって高校までは埋れていても大学で結果出すぞ、人生変えるぞって気持ちの人いっぱいいるじゃん?

 

でも当然まわりのレベルも高いから漫画のように上手くはいかなくて、じゃあ自分が生き残るには何をすればいいんだって悩みながら続けるけど駄目で、だんだんしんどくなってくるみたいなことってない?

 

一色:え、その連続じゃないですか?

 

━━ ふふっ。そうだね、そんなの当たり前過ぎるね(笑)

 

なんか悲劇のヒロイン演じてた自分がアホらしく思えてきたよ。

※分からない人は記事の最初の方を読んで下さい。

 

一色:馬鹿なのか楽観的なのか「もう無理だな」って思ったことは一度もないです。

 

まあもちろん不安はあります。大切なのはその不安から目を背けずにとことん向き合うこと。そして、考えて必死こいてがむしゃらに練習すること。それこそ考える練習を詰めて継続出来ていれば、良い緊張感で本番に臨めると思います。

 

 

━━ 直近の目標は?

 

一色:全日本実業柔道個人選手権の優勝です。

※取材は2021 11月に行いました

 

━━ 最終的な目標は?

 

一色:それは伏せときます。言ったら満足しそうなんで。

 

━━ なんで、、、!!教えてよ、、、!!

 

一色:まあまずは日本一になることですね。それから世界を目指したい……。

 

口だけならいくらでも言えるじゃないですか?オリンピックに出たいとか、金メダル獲りたいとか。自分はまだそれが現実的じゃないし、そんなこと言えるような位置にいないので、まずは日本一になることからです。

 

━━ ふんふん。そんなの超応援するよ。

 

一色:自分のために頑張るんですけど、それは結果を出して親とかお世話になっている人たちを喜ばせるためでもあるので、これからも常にベクトルを自分に向けながら、コツコツやっていきたいと思います。

 

 

***

 

一色選手と話していると「自分を信じるなんて当たり前。何に迷う必要があるの?」と、それまで悶々と気にしていた何かが一瞬で吹き飛んで消えてしまうような感覚になった。

 

小さくなってウジウジしてる自分が馬鹿みたいに思えてくるから、そんな気持ちにさせてくれる人の存在ってマジで有難い、、、。

 

これからは僕もちゃんと自分を信じて、信じられる努力を継続して、一歩一歩コツコツと進んでいきたい。

 

***

 

今回の取材は昨年11月にしたもので、のんびりだらだらしていたらこんなに遅くなってしまいました、、、。(土下座)

 

次回はストックしている記事を投稿して、またその間に新しい記事を書けるよう頑張ります。

 

 

Text by 平良賢人 @taiken0422

 

 

今回取材させてもらった一色選手のSNSはこちら。忙しい中時間を作ってくれてありがとうございました!

 

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